ラポールの意味と状態
ラポールとは?
ラポールは、もともとはフランス語が語源の言葉で「橋をかける」という意味です。臨床心理学の用語で「ココロを通い合うような関係」「調和がある関係」という意味をもっているために使われている用語です。
一言で言ってしまえば「信頼関係が構築されている状態」です。
カウンセラーやコーチ、ビジネスでも頻繁に使われているのですが、もともとはセラピストがクライアントとの間に相互に信頼をしあって安心して警戒心なく自分をオープンにだせる関係をつくるために用いられるようになったのがスタートです。
カウンセリングや心理療法・ビジネスなど・・どのような場合でもラポールは共通した前提条件として重視されています。
警戒も信用もされていない関係だと相手の悩みを聞く事もできませんからね・・・そうやって考えるとこのラポールの状態を作ることは人間関係全てに使えるため全ての人に必須の状態と言えるでしょう。
ラポール形成とは?
この信頼し合っている関係を構築した状態そのものを「ラポール形成」と言います。
ラポールを形成しよう→信頼関係を作ろう
ラポール形成できてない→信頼関係が構築できてない
ラポール形成できた→信頼関係が構築できた。
という使い方をします。しかし、このラポールという状態は「精神的な反応」であり一般社会で用いられるニュアンスで使おうとするとミスリードしてしまう可能性があります。
信頼関係を構築してラポールを形成したい!となると、約束を守るとか謝るとかそういった常識的・ビジネスマナーとして当たり前の行動をしようとしてしまいます。
これは私の中では「信用関係」でしかないと思っています。
当たり前だと思っていることをやってくれるか言ってることをやってくれるかどうか?という判断基準ではなく信頼関係というのは「不思議と気があう」「なぜか惹かれる」「裏切られたとしてもいい」といった理屈や常識で形成されるものではなく生理的な感覚だと認識しておいてください。
ハイパーラポールとは?
そして、このラポールを極めていくとハイパーラポールという状態を作ることもできます。催眠術師が自分の思い通りに相手を動かしていますが、これはハイパーラポールを形成しているからです。
「あなたはだんだん眠くなる・・」というと眠くなるのはラポールをより濃密・強烈にしているからです。
どれだけ優れた催眠術師でも、街中で歩いている話したこともない人に何もせずにやったとしても「は?何言ってるの?」と思われるだけです。
催眠術は実際に催眠をかける前から無意識に働きかけて心理操作をしているわけです・・・後で話すテクニックではその基本の方法について語っていきますが、個人で催眠を使わずにやる場合は「この人の言っていることは間違いないという体験をしてもらうこと」です。
実際、催眠術も最初は簡単なところからスタートします。
いきなりハードルの高いものをやらないのは「この人に身を預けても危険な目には合わない」「大丈夫でないものも大丈夫になる」という強い信頼感が前提にあるからなのです。
つまり、ハイパーラポールというのは強烈な信頼関係の状態であると捉えておくといいでしょう。
ラポール形成3原則
ラポールを形成するためにはいろんなテクニックがあるのですが、それ以前に知っておくべき原則があります。この原則から外れるとテクニックそのものが使いこなすことができませんので抑えておきましょう。
相手に関心・興味を持つ
ラポール形成の前提となる原則その1は相手に対して興味や関心をもつことです。確かにラポールのためのテクニックは役立ちます。
しかし、それらの行動を体全体で表現をしないと実践は難しいものです。頭の中で「全く興味がないし面白くない」状態だとどうしても目を合わせたり絶妙なタイミングで相槌するのは難しいですよね。
そのため「理解しよう。」「もっと知ろう」「相手のためになるようにしよう。」「この人どんな人なんだ?」という姿勢をもつことは非常に重要です。
「でも、それって思っちゃうことだからそう簡単にできない。」
という場合。しなくてもいい人にはしなくてもいいのですが、ビジネスシーンやその他の目的がある場合は大きな目的のための第一歩だという意識をもつとできるはずです。
例えば、商談の場合のゴールは「契約をとること」ですよね。そのために「この社長さんはどんな問題や悩みがあるのだろう?」「どういう切り口が響くだろうか?」ということを意識すればいいです。
ゴールのための過程として「興味や関心をもつべき項目」を強く意識するほど自然に興味や関心をもてるようになるはずです。
相手を肯定・尊重をする
相手の興味や関心を伝える時、そして相手があなたを信頼するときには「自分の世界観や価値観」を否定されると警戒をされて信頼を失います。
そこで「あなたはそう思っているんですね。そう感じてるんですね。」
と肯定的に尊重をされてると感じれば本当の悩みや困っている事やダメな部分を出せるような信頼関係は構築されません。
そこで大事になってくるのが「世の中にはいろんな考え方やモノの見方がある」ということを体験しようとする姿勢です。
よく自分の意見との相違を気にする人がいます。
意見が違うから共感できない・・・だから、肯定も尊重もできないというように考える人がいますが、それだと信頼関係は構築できません。
- 世の中には同じ出来事が起こっても同じように感じない人がいる。
- 同じように感じていてもそこに対する捉え方は人それぞれ違う。
- 同じゴールでも違う手段をとる人はいる。
全ての人間が全て一緒であるということはありえないのです。そのため意見の違いがあるから肯定できない。尊重できないという考えを持っているのならば捨てた方がいいです。
ではなく違うからこそ素晴らしい。違いがあれば興味を持ってみるということを意識するだけでも随分ラポールは構築しやすくなるはずです。
類似点を増やす
とはいえ、私達人間はどうしても似ている部分が多いほど、共感できるものが多いほど安心感を感じる傾向があります。
それは好きなモノから趣味や仕事。価値観や目指すゴール。
はたまた行動や身振り手振りなどの同調など。そういったものが類似するほどラポールは強くなっているのです。
それによってより話は弾んでいくのですが、これを聞いて無理をし自分を押し殺して「相手に合わせよう」とする人がいますが、これでは類似点は増えたとは言えません。
なぜならラポールは「あなたも相手も信頼している状態」だからです。
そのため、あなたがすべきところは
「類似している部分を探す事」
「そしてそれを増やしていくこと」
なのです。
探そうとする意思をもっていれば見つけることができるはずです。ひとたび見つけ出せばそこからどんどん増やしていけば、どんどん会話が弾んで見つけ出せるようになるでしょう。
あなたからみつけだせるようになれば、相手とのコミュニケーションや信頼関係を引っ張っていくこともできるようになるはずです。
この3つの原則をまずは守ってください。
これはあなた自身が意識すればできることなので、是非意識してください。それができていれば下記のようなテクニック論は使いこなすことができるようになるでしょう。
ほとんどの人はあなたに興味も関心も信頼関係を構築しよう!とも思っていません。「あなたから作ろうとしないと始まらない!」それくらいの気持ちで取り組みましょう!
NLPにおけるラポール形成テクニック
さて、原則はオッケーですか?ここからは多くのカウンセラーやコーチを生み出しているNLP(神経言語プログラミング)におけるラポールテクニックを紹介していこうと思います。
ミラーリング
ミラーリングというのは相手から見た時に鏡のように見えるように行動をするということです。簡単に言うと仲のいい人は同調しているかのごとく同じような動きをします。
これをあえて逆にするのです。それによって相手は「類似性・同調性」を感じ、あなた自身も「相手の感覚を理解する」ことができるようになるはずです。
しかし、マネをしているとわかってしまうと逆に嫌悪感を抱かれるため、一部を真似するところからスタートしましょう。
ペーシング
ペーシングは、一言で言えば相手と同じペースで反応をしたり行動をすることです。歩くときに相手が明らかに自分よりも早いスピードで進まれると「自分のことは無視されている」と感じるのですが、なぜか同じペースだと安心をするものです。
身体反応や話し方など、ペースを合わせる事によって互いに理解をしあえる感覚を得ることができてミラーリングより使いやすいはずです。
バックトラッキング
バックトラッキングは、日本語で言うと「おうむ返し」と呼ばれる、お笑い芸人やコミュニケーションのプロと言う人達が使っている非常に有効か手法です。
バックトラッキングは相手の話を聞いていることを示し、あなた自身も相手の話を再認識し記憶するために使います。
これをより高いレベルでできるようになると、ただ相手の言葉を返すだけで信頼関係を構築できるコミュニケーションをとることができるようになります。
まずは、「苦しかったんですよ!」ならば「苦しかったんですね。」「え?苦しかったんですか?」というようにあらゆるパターンでおうむ返しをするところから練習をしましょう。
キャリブレーション
キャリブレーションとは?相手の心理状態を言語以外のサインで認識することです。一見難しく感じるかもしれませんが、会話をしている時に話している内容ではなく表情や姿勢や声のトーンなどに注意を向けるというだけです。
例えば、一般的には辛いと感じる出来事の内容を話しているのに声のトーンは明るめであったり笑顔だったりするのならば・・・それは相手が辛い出来事を辛いと認識していない可能性がある。
ということになります。
このように会話の内容以外の部分に目をむけて観察することによって相手の心理を知ることができるので意識してみてください。ラポール形成に役立つはずです。
リーディング
リーディングとは、相手の注意や焦点の方向に望む方向にリードをすることを言います。
このリーディングはラポールの形成度合いの確認としても使えるのである程度ラポールが形成されたかどうかを確認するために使てください。
とは言ってもこっちの主張や意見や提案を受け入れるのか?
という確認方法だとハードルが高いという人もいると思うので、一番簡単な方法として非言語で見ていくのがいいでしょう。例えば、あなたが自然と前のめりになった時に相手も前のめりになる感じになっているか?でもいいです。
確認が終わったら実際に小さな提案や要求をしてみるといいでしょう。信頼関係は両方が二人の関係のために何らかの消費をおこなうことによってより強固になっていくものですから遠慮なくやっていきましょう。
これらのNLPテクニックはラポール形成に非常に役立つので是非とも活用してください。
最後に
さて、いかがでしたか?ここではラポールについて解説をしてきましたが意味がわからないという方がいるのならば、とにかく体感をしたほうがいいです。
なぜなら信頼関係というのは目に見えない認知できないものだからです。実際に信頼関係を構築できるようになって初めて「そういうものか」となりますから。
また、ラポールはわかるけど意図的に作れないという方は原理原則を抑えたうえでテクニックを活用してみてください。ラポールは人と人との関係構築のために基本中の基本ですからとにかく実践していきましょう!!